「疑いは知識のはじまりであり、疑いがなければ知識は進歩しない」

– フランシス・ベーコン

疑問を持つことが、新たな理解への扉を開きます。

🤔 意味と用法

doubt は、名詞と動詞の両方で使われ、「疑い」や「不確かさ」に関連する意味を持ちます。
名詞 /daʊt/ として:
疑い、疑念、不確かさ、懸念。何かが真実か、正しいか、起こりうるかについての確信が欠けている状態。「There is some doubt about his guilt. (彼の有罪には疑いがある。)」
動詞 /daʊt/ として:

  1. ~を疑う、~が本当か疑問に思う: 事実や人の能力などを信じられない、確信が持てないこと。「I doubt the truth of his statement. (私は彼の発言の真実性を疑う。)」
  2. ~かどうか疑わしく思う: (doubt if/whether …) 「I doubt whether he will come. (彼が来るかどうか疑わしい。)」

💡 使い分け: 動詞の場合、肯定文で「~ではないと思う」という否定的な推量を表すことが多いです。逆に `I don’t doubt that…` は「~だと確信している」という意味になります。

疑い (名詞)

There’s no doubt about her talent.

(彼女の才能については疑いの余地がない)

疑う (動詞)

I doubt he’ll pass the exam.

(彼が試験に合格するとは思えない(疑わしい))

📜 語源と歴史

「Doubt」の語源は、ラテン語の動詞「dubitāre」(疑う、ためらう)です。これは「疑わしい」を意味する形容詞「dubius」に関連しています。

さらに「dubius」は、「二つの」を意味する「duo」に由来すると考えられています。これは、二つの選択肢の間で心が揺れ動き、どちらか一方を確信できない「疑い」の状態を表しています。

このラテン語が古フランス語の「douter」を経て、中英語期に「douten」として英語に入り、現代の「doubt」となりました。発音されない `b` は、後にラテン語の語源に合わせて綴りに加えられたものです。

LATIN
(dubitāre ← dubius ← duo)
OLD FRENCH
(douter)
MIDDLE ENGLISH
(douten → doubt)
MODERN ENGLISH
(doubt)

📋 活用形と派生語

Doubt (動詞) の活用形

活用形 英語 発音
原形 doubt daʊt
三人称単数現在形 doubts daʊts
過去形 doubted ˈdaʊtɪd
過去分詞 doubted ˈdaʊtɪd
現在分詞 doubting ˈdaʊtɪŋ

派生語・関連語

  • Doubt (名詞) – 疑い、疑念、不確かさ
    There is room for doubt.
  • Doubtful (形容詞) – 疑わしい、疑っている
    It’s doubtful whether he’ll agree.
  • Doubtfully (副詞) – 疑わしそうに
  • Doubtless (副詞/形容詞) – 疑いなく、おそらく
    Doubtless, you are right.
  • Doubter (名詞) – 疑う人、懐疑的な人
  • Undoubtedly (副詞) – 疑いなく、確かに

🤔 類義語

名詞 (疑い)

suspicion (疑念、感づき)
skepticism (懐疑的な考え)
uncertainty (不確かさ)
disbelief (不信)
misgiving (不安、疑念)

動詞 (疑う)

question (疑問視する)
suspect (~ではないかと疑う)
distrust (信用しない)
mistrust (信用しない)

💡 反対語・混同しやすい単語

反対語 (確信・信頼)

certainty (確実性)
belief (信念、信じること)
trust (信頼)
faith (信頼、信仰)
conviction (確信)
believe (信じる – 動詞)

混同しやすい単語

  • Debt (債務、借金):
    発音: /det/ (bは黙字)
    ※ `doubt` /daʊt/ とは発音が異なるが、綴りの `b` が共通している点で注意。意味は全く異なる。

❓ コロケーション (よく使われる組み合わせ)

🤔 have / express / raise / cast doubt(s) (on/about something): 疑いを持つ/表す/提起する/投げかける
例: Some people have expressed doubts about the plan. (その計画について疑念を表す人もいる。)

🚫 no doubt / without (a) doubt / beyond (a) doubt: 疑いなく、確かに
例: She is without doubt the best person for the job. (彼女がその仕事に最適な人物であることは疑いない。)

😟 in doubt / open to doubt: 疑わしい状態で、不確かで
例: The future of the project is in doubt. (そのプロジェクトの将来は不確かだ。)

🧐 serious / nagging / lingering / reasonable doubt: 深刻な/つきまとう/消えない/合理的な 疑い
例: There is reasonable doubt about his guilt. (彼の有罪には合理的な疑いがある。)

😔 self-doubt: 自己疑念
例: He was filled with self-doubt before the presentation. (彼はプレゼンの前に自己疑念でいっぱいだった。)

doubt someone’s word / sincerity / ability: (人)の言葉/誠実さ/能力を疑う
例: I never doubted her ability to succeed. (私は彼女が成功する能力を疑ったことはない。)

💬 実践的な例文

1

I have some doubt about his story.

彼の話にはいくらか疑いがあります。(名詞)

状況: 話の信憑性を疑う場面
2

She doubted her own abilities before taking on the challenge.

彼女は挑戦する前に自分の能力を疑いました。(動詞)

状況: 自分の能力に自信がない場面
3

The witness’s testimony cast doubt on the defendant’s innocence.

証人の証言は被告の無実に疑いを投げかけました。(名詞)

状況: 証言によって疑念が生じる場面
4

He had no doubt that he would succeed.

彼は自分が成功することを疑っていませんでした。(名詞)

状況: 成功を確信している場面
5

I doubt if this plan will work.

この計画がうまくいくかどうか疑わしい。(動詞)

状況: 計画の成功を疑問視する場面

🧠 文法問題 (品詞と形)

以下の空欄に入る最も適切な doubt の形を選んでください。

1. There is no ____ that she is the best candidate for the job.

a) doubt (noun)
b) doubts (noun)
c) doubted (verb)
d) doubting (verb)

解説:

正解は a) doubt (名詞) です。「There is no …」の後には通常、不可算名詞または単数形の名詞がきます。「疑いの余地がない」という慣用表現です。

2. He began to ____ his ability to complete the project on time.

a) doubt (verb)
b) doubts (verb)
c) doubt (noun)
d) doubting (verb)

解説:

正解は a) doubt (動詞の原形) です。「began to …」の後には動詞の原形がきます。「彼の能力を疑い始めた」となります。

3. She never ____ her friend’s loyalty.

a) doubt (verb)
b) doubts (verb)
c) doubted (verb)
d) doubting (verb)

解説:

正解は c) doubted (動詞の過去形) です。「never」は過去形とも現在形とも使えますが、「友人の忠誠心を(過去から今まで一度も)疑ったことがない」というニュアンスでは過去形が自然です。(習慣的に疑わないなら現在形 `doubts` も文法的には可能ですが、文意として過去形が一般的。)

4. They are ____ whether they made the right decision.

a) doubt (verb)
b) doubts (noun)
c) doubted (verb)
d) doubting (verb)

解説:

正解は d) doubting (現在分詞) です。「are …」とあるので、現在進行形 (be + -ing) を作る現在分詞が必要です。「彼らが正しい決断をしたかどうか疑っている」となります。

5. Her face showed no ____ about the truth of his story.

a) doubt (noun)
b) doubts (noun)
c) doubted (verb)
d) doubting (verb)

解説:

正解は a) doubt (名詞) です。「showed no …」の後には名詞がきます。「疑い」は通常不可算名詞として扱われるため、単数形が適切です。