をのこ(男・男子) (名詞)

①男、男性 ②(特に)従者、召使いの男 ③男の子、息子

「女(をみな)」の対義語。文脈によって指す対象の年齢や身分が異なる。

りりしい武士から、忠実な従者、愛らしい男の子まで。「をのこ」は様々な男性の姿を映し出します。

📖意味と用法

をのこ(男・男子)は、名詞で、男性全般を指す言葉です。現代語の「男(おとこ)」に相当しますが、古文では文脈によってニュアンスが異なります。

  1. 男、男性:
    最も一般的な意味で、成人男性を指します。「女(をみな)」の対語です。
  2. (特に)従者、召使いの男、身分の低い男:
    貴族などに仕える男性の従者や、身分の低い男性を指すことがあります。この場合、「をとこ」と区別して使われることもあります。
  3. 男の子、息子:
    幼い男の子や、自分の息子を指す場合もあります。「をのこご(男子子)」の形も使われます。

「をのこ」が具体的にどのような男性を指しているかは、文中の身分関係や年齢、状況から判断する必要があります。「をとこ」も男性を指しますが、「をのこ」の方がやや広義で、特定の役割や身分を含意することがあります。

男性の例

をのこも女も、かしこに集ひけり。(竹取物語)

(男も女も、あそこに集まった。)

従者の例

御供にをのこどもあまた連れたり。(伊勢物語)

(お供に多くの従者の男たちを連れていた。)

男の子の例

うつくしきをのこごを産み給へり。(源氏物語)

(かわいらしい男の子をお産みになった。)

🕰️語源と歴史

「をのこ」は、「を(接頭語、小さい・若いなどの意を表すこともある)」+「のこ(男の意)」から成ると考えられています。「のこ」は「男(を)」と同源で、男性を指す古い言葉です。

上代から使われており、「をとこ」としばしば並用されましたが、時代や文脈によって使い分けが見られることもありました。例えば、和歌などでは優美な響きを求めて「をとこ」が、物語などではより具体的に「をのこ」が使われる傾向があったとも言われます。

📝関連語

「をのこ」は名詞のため活用はありませんが、関連する表現があります。

  • をとこ(男) (名詞) – 男、夫、恋人。
  • をのこご(男子子) (名詞) – 男の子、男児。
  • をのこむすめ(男女) (名詞) – 男女。
  • をのこども(男共) (名詞) – 男たち、特に従者たち。

🔄類義語

男、男性

をとこ(男)
ますらを(丈夫)(立派な男)

↔️対義語

「をのこ」の直接的な対義語は「女」を指す言葉です。

をみな(女)
めのこ(女子)(女の子)

🗣️実践的な例文(古文)

1

をのこども、御前おんまえさぶらふ。(枕草子)

【訳】従者の男たちが、御前にお仕えする。

意味: ② 従者、召使いの男
2

むかしをのこありけり。(伊勢物語)

【訳】昔、ある男がいた。

意味: ① 男、男性
3

このこのみやをのこいといとさかし。(源氏物語)

【訳】この宮の息子様は、たいそう賢い。

意味: ③ 男の子、息子
4

をのこりに、をみな物縫ものぬひに。(徒然草)

【訳】男は狩りに、女は裁縫に(いそしむ)。

意味: ① 男、男性
5

わかをのこの、ふみたり。(更級日記)

【訳】若い男(召使いの男)が、手紙を持って来た。

意味: ① 男、男性 / ② 召使いの男

📝練習問題

傍線部の「をのこ」の現代語訳として最も適切なものを選んでください。

1. あるあるをのこ宮仕みやづかへしけるけるをんなひにけり。

従者
男の子

解説:

「あるをのこ」は特定の身分や役割を示さず、一般的な「男」を指しています。宮仕えの女性と恋愛関係になる男性、という意味合いです。

2. かどけて、をのこものふ。

男の子
息子
召使いの男
主人

解説:

門を開けて出てきた相手に物を尋ねる場面で、家の「召使いの男」や門番のような役割の男性を指すことが多いです。

3. きさきみやをのこたち、いといとおほかり。

夫たち
息子たち
従者たち
男の兄弟たち

解説:

「后の宮の」とあるので、その后の宮の「息子たち」を指している可能性が高いです。「御」が付いていることからも、身分のある子供と考えられます。

4. 弓矢ゆみやとるみちは、をのこならひなり。

男性
武士
従者
子供

解説:

弓矢を取る武芸の道は、「男性」一般の習わしである、という意味です。特定の身分や年齢に限定されません。

5. わかうつくしきをのこの、ふえましてとほぐる。

少年
若い男
召使い
貴公子

解説:

「若く美しい」と形容されているので、「若い男」を指します。特に身分が高いとは限りませんが、魅力的な男性のイメージです。

古文単語「をのこ」クイズゲーム(選択問題編)

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