「あまりの輝きに目を背けたくなる。それは太陽の光か、高貴な人の美しさか、それとも自らの失敗か。すべてが『まばゆき』ことなのです」
📖 意味と用法
まばゆしは、ク活用の形容詞で、「正視できない」という状態から様々な意味に派生した多義語です。
- まぶしい、きらびやかだ: 光が強すぎて目がくらむ、まともに見られない様子。
- まぶしいほど美しい・立派だ: 相手の美しさや身分の高さが輝かしく、気後れして直視できない様子。
- 恥ずかしい、きまりが悪い: 相手が立派すぎて、自分がひけめを感じて恥ずかしい。また、自分の失敗などを見ていられず恥ずかしい場合にも使う。
- 見ていられない、目を背けたいほどひどい: 醜いものや、ひどい状態のものから目をそむけたくなる様子。
「まともに見られない」というコアな意味を理解し、なぜ見られないのか(光、美しさ、恥ずかしさ、醜さ)を文脈で判断します。
🕰️ 語源と歴史
語源は「目(ま)」+「映ゆ(はゆ)」。「映ゆ」は光が反射してきらめく意味で、「目に光が照り輝く」ことから「まぶしい」という意味になりました。この「まぶしさ」が、心理的な「恥ずかしさ」や、見たくないという「嫌悪感」にまで応用されていきました。
📝 活用形と派生語
「まばゆし」の活用(形容詞ク活用)
活用形 | 語形 |
---|---|
未然形 | まばゆく |
連用形 | まばゆく |
終止形 | まばゆし |
連体形 | まばゆき |
已然形 | まばゆけれ |
命令形 | (まばゆかれ) |
派生語
- まばゆがる (動) – まぶしがる、恥ずかしがる。
🔄 類義語
↔️ 反対の概念
「暗い」「見栄えがしない」といった言葉が対照的です。
🗣️ 実践的な例文(古文)
日の光の、いとまばゆきに。(枕草子)
【訳】日の光が、たいそうまぶしいので。
居たる人の様、まばゆきまで見ゆ。(源氏物語)
【訳】座っている人の様子が、まぶしいほど立派に見える。
若き人の前に出づるは、まばゆくて。(徒然草)
【訳】若い人の前に出るのは、きまりが悪くて。
📝 練習問題
傍線部の「まばゆし」の現代語訳として最も適切なものを選んでください。
1. 御前に人々の参りたるが、いとまばゆき心地す。
解説:
帝などの高貴な方の前に身分の高い人々が並んでいる様子を見て、自分がその場にいるのが「気後れして恥ずかしい」気持ちがすると解釈するのが適切です。
2. 月の光、雪に映じて、まばゆき夜なり。
解説:
月の光が雪に反射している状況なので、物理的に「まぶしい」夜であると解釈します。
3. あまりにあさましきことなれば、まばゆくて目をふさぐ。
解説:
「あさましきこと(驚きあきれるほどひどいこと)」なので、正視できず「見ていられなくて」目をふさぐ、と解釈するのが適切です。