古文単語解説:まばゆし

まばゆし (形容詞・ク活用)

①(光が)まぶしい ②まぶしいほど美しい ③恥ずかしい ④見ていられない

目に映る光が強すぎること。物理的な光から、美しさ、そしてきまりの悪さまで。

「あまりの輝きに目を背けたくなる。それは太陽の光か、高貴な人の美しさか、それとも自らの失敗か。すべてが『まばゆき』ことなのです」

📖 意味と用法

まばゆしは、ク活用の形容詞で、「正視できない」という状態から様々な意味に派生した多義語です。

  1. まぶしい、きらびやかだ: 光が強すぎて目がくらむ、まともに見られない様子。
  2. まぶしいほど美しい・立派だ: 相手の美しさや身分の高さが輝かしく、気後れして直視できない様子。
  3. 恥ずかしい、きまりが悪い: 相手が立派すぎて、自分がひけめを感じて恥ずかしい。また、自分の失敗などを見ていられず恥ずかしい場合にも使う。
  4. 見ていられない、目を背けたいほどひどい: 醜いものや、ひどい状態のものから目をそむけたくなる様子。

「まともに見られない」というコアな意味を理解し、なぜ見られないのか(光、美しさ、恥ずかしさ、醜さ)を文脈で判断します。

🕰️ 語源と歴史

語源は「目(ま)」+「映ゆ(はゆ)」。「映ゆ」は光が反射してきらめく意味で、「目に光が照り輝く」ことから「まぶしい」という意味になりました。この「まぶしさ」が、心理的な「恥ずかしさ」や、見たくないという「嫌悪感」にまで応用されていきました。

📝 活用形と派生語

「まばゆし」の活用(形容詞ク活用)

活用形語形
未然形まばゆく
連用形まばゆく
終止形まばゆし
連体形まばゆき
已然形まばゆけれ
命令形(まばゆかれ)

派生語

  • まばゆがる (動) – まぶしがる、恥ずかしがる。

🔄 類義語

かがやかし (きらきら輝く)
はづかし (恥ずかしい/立派だ)

↔️ 反対の概念

「暗い」「見栄えがしない」といった言葉が対照的です。

くらし

🗣️ 実践的な例文(古文)

1

ひかりの、いといとまばゆきまばゆきに。(枕草子)

【訳】日の光が、たいそうまぶしいので。

2

たるひとさままばゆきまばゆきまでゆ。(源氏物語)

【訳】座っている人の様子が、まぶしいほど立派に見える。

3

わかひとまえづるは、まばゆくまばゆくて。(徒然草)

【訳】若い人の前に出るのは、きまりが悪くて。

📝 練習問題

傍線部の「まばゆし」の現代語訳として最も適切なものを選んでください。

1. おんまへ人々ひとびとまゐりたるが、いとまばゆき心地す。

まぶしい
美しい
気後れして恥ずかしい
見ていられない

解説:

帝などの高貴な方の前に身分の高い人々が並んでいる様子を見て、自分がその場にいるのが「気後れして恥ずかしい」気持ちがすると解釈するのが適切です。

2. つきひかりゆきえいじて、まばゆきなり。

まぶしい
美しい
恥ずかしい
見ていられない

解説:

月の光が雪に反射している状況なので、物理的に「まぶしい」夜であると解釈します。

3. あまりにあまりにあさましきあさましきことことなれば、まばゆくふさぐふさぐ

まぶしくて
美しくて
恥ずかしくて
見ていられなくて

解説:

「あさましきこと(驚きあきれるほどひどいこと)」なので、正視できず「見ていられなくて」目をふさぐ、と解釈するのが適切です。

古文単語「まばゆし」クイズゲーム(選択問題編)

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