古文単語解説:あからめ

あからめ (名詞)

①わき見・よそ見 ②浮気

視線がそれることから、心がそれることへ。恋愛文学の重要キーワード。

「ほんの『あからめ』のつもりが、本気の恋に。視線の先には、いつも波乱が待っている」

📖 意味と用法

あからめ は、視線や心が本来向かうべき対象からそれることを指す名詞です。

  1. わき見、よそ見: 文字通り、視線を他の方向へ移すこと。「あからめもせず」の形で、「わき見もしないで」という頻出表現になります。
  2. 浮気、心変わり: 特定の恋人や配偶者がいるにもかかわらず、他の異性に心を移すこと。恋愛和歌や物語で非常に重要な意味を持ちます。

「目をそらす」という物理的な行為が、「心をそらす」という比喩的な意味に発展したと理解するのがポイントです。文脈、特に恋愛の場面かどうかで意味を判断します。

「わき見」の例

あからめもせず、ただ一人ゐ給へり。(源氏物語)

(わき見もなさらず、ただお一人でいらっしゃった。)

「浮気」の例

あからめしつと人の咎めもやあらむ。(蜻蛉日記)

(私が浮気をしたと、人が非難することもあるだろうか。)

🕰️ 語源と関連語

語源は「赤ら目」で、目が赤くなるほどキョロキョロとわき見をすることから来ているという説や、動詞「離る(あかる)」から来ているという説があります。

「あからさまなり(ほんのちょっとだ)」と語源が近いと考えられており、「ほんのちょっと目をそらす」というニュアンスが根底にあります。その「ちょっとした気のゆるみ」が、恋愛においては「浮気」という重大な意味に繋がっていきます。

🔄 類義語

浮気

うはなり
よそ心

📝 練習問題

傍線部の「あからめ」の現代語訳として最も適切なものを選んでください。

1. あからめもせで、月を見て明かしつ。(伊勢物語)

わき見
浮気
心変わり
よそ見

解説:

「〜もせず」の形で、月をじっと見つめている様子を描写しています。したがって「わき見」が適切です。「よそ見」もほぼ同義ですが、ここでは「わき見」が定型的な訳です。

2. 我があからめを人の咎むるならむ。(和泉式部日記)

わき見
浮気
心変わり
よそ見

解説:

恋愛の文脈で、自分の行動が他人に非難される可能性について述べています。ここでは「浮気」と訳すのが最も適切です。

3. あからめしけるほどに、この女、うせにけり。(大和物語)

わき見をしていた
浮気をしていた
よそ見をしていた
心変わりした

解説:

男が「浮気をしていた」間に、もとの女がいなくなってしまった、という悲劇的な場面です。②の意味で使われています。

4. 須磨には、あからめすべき隈もありしを。(源氏物語)

わき見
よそ見
気晴らし
浮気

解説:

須磨にいた頃は、「浮気」をするような場所もあったのに、という意味。ここでは「浮気」が最も近いですが、「わき見」をして「気晴らし」をする、というニュアンスも含まれています。

5. あからめもせず向き合ひて、(とりかへばや物語)

わき見
浮気
心変わり
よそ見

解説:

1番の問題と同じく、「〜もせず」の否定形です。「わき見」もせずにじっと向き合っている、という状況を表しています。

古文単語「あからめ」クイズゲーム(選択問題編)

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