古文単語解説:かたし(難し)

かたし(難し) (形容詞・ク活用)

① 難しい、困難だ ②(下に打消を伴い)めったにない ③ 厳格だ

物事の成就が容易ではないこと。物理的な堅さから、精神的な困難さまで。

「この問題を解くのは『かたし』、そしてあなたのような人に出会うのもまた『かたし』。どちらも容易ではないのです」

📖 意味と用法

かたしは、ク活用の形容詞で、現代語の「かたい」と共通の語源を持ちますが、意味は「難しい」が中心です。

  1. 難しい、困難だ: 最も基本的な意味。物事を成し遂げるのが容易ではないこと。
  2. (連用形「かたく」+打消で)めったに~ない、容易に~ない: 「難く~ず」の形で、「~するのは難しい」→「めったに~ない」という強い否定を表します。
  3. 厳格だ、堅苦しい: 規則や態度が厳しく、融通がきかない様子。

「~しにくい」という意味で、動詞の連用形に付くことも多いです(例:「言ひがたし」→言いにくい)。

🕰️ 語源と歴史

語源は、物理的に「堅い」ことです。石のように堅いものは加工が難しいことから、物事が「困難である」という意味に発展しました。現代語では「堅い」「硬い」と「難しい」は別の言葉ですが、古文では「かたし」が両方の意味合いを担っていました。

📝 活用形と関連語

「かたし」の活用(形容詞ク活用)

活用形語形
未然形かたく
連用形かたく
終止形かたし
連体形かたき
已然形かたけれ
命令形(かたかれ)

関連語

  • かたくななり (形動) – 頑固だ、教養がない。

🔄 類義語

むつかし (難しい、不快だ)

↔️ 反対の概念

「簡単だ」「容易だ」という意味の言葉が対照的です。

やすし (容易だ、安心だ)
たやすし (たやすい)

🗣️ 実践的な例文(古文)

1

これこれまなること、かたしかたし。(徒然草)

【訳】これを学び習得することは、難しい。

2

言ひいひにくく、またまたかたきかたきことなり。(源氏物語)

【訳】言いにくく、また聞きづらいことである。

3

かたくかたくしんじて、うたがこころなし。(今昔物語集)

【訳】堅く信じて、疑う心がない。

📝 練習問題

傍線部の「かたし」の現代語訳として最も適切なものを選んでください。

1. 千年ちとせくるひとかたし

めったにない
難しい
厳格だ
堅い

解説:

千年も生きる人は「めったにない(まれだ)」と解釈するのが最も適切です。「生きるのが難しい」とも取れますが、ここでは存在の希少性を指します。

2. このこの問ひとひ答ふこたふること、いとかたし

めったにない
難しい
厳格だ
堅い

解説:

問いに答えるという行為についてなので、「難しい」と訳すのが適切です。

3. かたくきんずるにあらず。

難しく
めったに
厳格に
堅く

解説:

禁じるという行為の程度についてなので、「厳格に」禁じるわけではない、と解釈するのが最も自然です。

古文単語「かたし」クイズゲーム(選択問題編)

古文単語「かたし」クイズゲーム(選択問題編)