「この問題を解くのは『かたし』、そしてあなたのような人に出会うのもまた『かたし』。どちらも容易ではないのです」
📖 意味と用法
かたしは、ク活用の形容詞で、現代語の「かたい」と共通の語源を持ちますが、意味は「難しい」が中心です。
- 難しい、困難だ: 最も基本的な意味。物事を成し遂げるのが容易ではないこと。
- (連用形「かたく」+打消で)めったに~ない、容易に~ない: 「難く~ず」の形で、「~するのは難しい」→「めったに~ない」という強い否定を表します。
- 厳格だ、堅苦しい: 規則や態度が厳しく、融通がきかない様子。
「~しにくい」という意味で、動詞の連用形に付くことも多いです(例:「言ひがたし」→言いにくい)。
🕰️ 語源と歴史
語源は、物理的に「堅い」ことです。石のように堅いものは加工が難しいことから、物事が「困難である」という意味に発展しました。現代語では「堅い」「硬い」と「難しい」は別の言葉ですが、古文では「かたし」が両方の意味合いを担っていました。
📝 活用形と関連語
「かたし」の活用(形容詞ク活用)
活用形 | 語形 |
---|---|
未然形 | かたく |
連用形 | かたく |
終止形 | かたし |
連体形 | かたき |
已然形 | かたけれ |
命令形 | (かたかれ) |
関連語
- かたくななり (形動) – 頑固だ、教養がない。
🔄 類義語
むつかし (難しい、不快だ)
↔️ 反対の概念
「簡単だ」「容易だ」という意味の言葉が対照的です。
やすし (容易だ、安心だ)
たやすし (たやすい)
🗣️ 実践的な例文(古文)
1
これを学び得ること、かたし。(徒然草)
【訳】これを学び習得することは、難しい。
2
言ひにくく、また聞かたきことなり。(源氏物語)
【訳】言いにくく、また聞きづらいことである。
3
かたく信じて、疑ふ心なし。(今昔物語集)
【訳】堅く信じて、疑う心がない。
📝 練習問題
傍線部の「かたし」の現代語訳として最も適切なものを選んでください。
1. 千年を生くる人、かたし。
めったにない
難しい
厳格だ
堅い
解説:
千年も生きる人は「めったにない(まれだ)」と解釈するのが最も適切です。「生きるのが難しい」とも取れますが、ここでは存在の希少性を指します。
2. この問ひに答ふること、いとかたし。
めったにない
難しい
厳格だ
堅い
解説:
問いに答えるという行為についてなので、「難しい」と訳すのが適切です。
3. かたく禁ずるにあらず。
難しく
めったに
厳格に
堅く
解説:
禁じるという行為の程度についてなので、「厳格に」禁じるわけではない、と解釈するのが最も自然です。