古文単語解説:いまめかし

いまめかし (形容詞・シク活用)

①当世風だ・現代風だ・華やかだ ②軽薄だ・今さらめいている

「今」の時代の流行やスタイルを表す言葉。プラスにもマイナスにも使われる。

「『いまめかしい』ファッションは、時代を映す鏡。ある時代では最先端でも、次の時代では古臭く見えてしまうかも」

📖 意味と用法

いまめかし は、シク活用の形容詞で、「今」という時代を意識させる様子を表します。文脈によって良い意味にも悪い意味にもなるのが特徴です。

  1. 【プラス評価】当世風だ、現代風だ、華やかだ、新鮮だ: ポジティブな文脈で使われ、その時代の流行に合っていて、しゃれている様子を指します。
  2. 【マイナス評価】軽薄だ、軽々しい、今さらめいている: ネガティブな文脈で使われ、流行を追いすぎて中身がない、あるいは、今さらそんなことをするなんて、という非難のニュアンスを持ちます。

文脈からプラス・マイナスのどちらの意味で使われているかを判断することが重要です。作者や登場人物が、その「当世風」なあり方をどう評価しているかに注目しましょう。

プラス評価の例

いまめかしきもの、唐の錦。(枕草子)

(当世風で華やかなもの、それは唐の錦だ。)

マイナス評価の例

すべて、いまめかしきことを好み、(徒然草)

(すべて、当世風で軽薄なことを好み、)

🕰️ 語源と歴史

「いまめかし」は、「今めく」という動詞に、状態を表す接尾語「し」が付いた形です。「今めく」は「今らしい様子になる」「現代風になる」という意味です。

平安時代には、宮廷文化の洗練された「今」を肯定的に捉え、「当世風で華やかだ」というプラスの意味で使われることが多くありました。しかし、鎌倉時代以降、兼好法師のように古いものを尊び、新しい流行を軽薄だと考える価値観も現れ、マイナスの意味でも使われるようになりました。

📝 活用形

「いまめかし」の活用(形容詞シク活用)

活用形 語形 接続
未然形 いまめかしく(は)
連用形 いまめかしく / いまめかしう て、用言
終止形 いまめかし 言い切り
連体形 いまめかしき 体言
已然形 いまめかしけれ ば、ども
命令形 (いまめかしかれ) (まれ)

🔄 類義語

当世風だ

めづらし
はなやかなり

↔️ 反対の概念

「当世風」の反対なので、「古風な」「昔ながらの」といった意味の単語が挙げられます。

ふるめかし (古風だ)
昔かたぎ (昔風の気質)

📝 練習問題

傍線部の「いまめかし」の現代語訳として最も適切なものを選んでください。

1. 女房などの、いまめかしうするは、あなづりやすきなるべし。(徒然草)

現代風に
軽薄に
新鮮に
華やかに

解説:

筆者である兼好法師の価値観が反映されています。「あなづりやすき(軽蔑されやすい)」とあることから、マイナス評価の「軽薄に」が適切です。

2. 調度なども、昔覚えて、いまめかしからず。(源氏物語)

軽薄でなく
今さらめいていなく
当世風でなく
新鮮でなく

解説:

「昔覚えて(古風に思われて)」とあるので、その対比として「当世風でない」と訳すのが最も自然です。ここではプラス・マイナスの評価よりも、様式の新旧が問われています。

3. 何ごともいまめかしきを本として、(源氏物語)

当世風で華やかなこと
軽薄なこと
今さらめいていること
目新しいこと

解説:

源氏物語の若紫の巻で、光源氏が理想の女性を育てる場面です。ここでは、洗練された現代的なセンスを基本にするという、プラスの意味で使われています。

4. かざりたる小太刀など、いまめかしきをさげ、(堤中納言物語)

軽薄な
現代風でしゃれた
今さらめいた
古風な

解説:

「かざりたる(装飾を施した)小太刀」という文脈から、その装飾が当世風でしゃれている様子を肯定的に描写していると考えられます。

5. いまめかしき名のりするも、いかなるぞ。(平家物語)

華やかな
今さらめいた
現代風の
新鮮な

解説:

武士が名乗りを上げる場面です。「いかなるぞ(どういうことだ)」と疑問を呈していることから、その名乗り方が軽々しい、あるいは今さらそんな名乗り方をするのか、という非難のニュアンスが含まれていると解釈できます。

古文単語「いまめかし」クイズゲーム(選択問題編)

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