古文単語解説:つきづきし

つきづきし (形容詞・シク活用)

似つかわしい・ふさわしい・調和がとれている

その場や状況にぴったりフィットしている心地よい状態を表すプラス評価の言葉。

「冬の朝の雪景色は、いかにも『つきづきし』。これ以上ないほどの組み合わせに、心が満たされる」

📖 意味と用法

つきづきし は、シク活用の形容詞で、ある物事や人が、その場や状況、季節、身分などとよく合っていて、調和がとれている様子を表します。常にプラスの意味で使われるのが特徴です。

何と何が「似つかわしい」のか、その組み合わせを文脈から読み取ることが大切です。「AはBに(とって)つきづきし」という構造を意識すると分かりやすくなります。

人と物の調和

年のほどなども、いとつきづきしう、(源氏物語)

(年の頃なども、(その装束に)たいそう似つかわしく、)

季節と行事の調和

正月一日は、…いとつきづきし。(枕草子)

(正月一日は、(晴れやかな空模様が)たいそう似つかわしい。)

🕰️ 語源と歴史

動詞「付く(つく)」に、状態を表す接尾語「し」が付いた形です。「付く」には「くっつく」「調和する」という意味があり、そこから「ぴったりとくっついているような感じだ」→「似つかわしい」という意味になりました。

平安貴族の美意識の中で、物事の「調和(ハーモニー)」は非常に重要な要素でした。「つきづきし」は、その調和がとれた心地よい状態を的確に表現する言葉として、広く用いられました。

📝 活用形

「つきづきし」の活用(形容詞シク活用)

活用形 語形 接続
未然形 つきづきしく(は)
連用形 つきづきしく / つきづきしう て、用言
終止形 つきづきし 言い切り
連体形 つきづきしき 体言
已然形 つきづきしけれ ば、ども
命令形 (つきづきしかれ) (まれ)

🔄 類義語

似つかわしい

ふさわし
似げし(にげし)

↔️ 対義語

「似つかわしくない」「不釣り合いだ」という意味の「つきなし」が直接の対義語です。

つきなし (似つかわしくない)

📝 練習問題

傍線部の「つきづきし」の現代語訳として最も適切なものを選んでください。

1. 雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子参りて、…つきづきし。(枕草子)

似つかわしい
美しい
好ましい
趣深い

解説:

雪が高く降り積もった日に、いつもと違って御格子を上げて(雪景色を見ている)という状況が「似つかわしい」と述べています。冬の情景と人々の行動が調和している様子です。

2. 何事も、若きほどは、つきづきしうこそあれ。(徒然草)

好ましく
似つかわしく
若々しく
美しく

解説:

「何事も、若い間は(その若さに)似つかわしいものだ」という意味。若さという属性と、様々な言動が調和している、と述べています。

3. 夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。…雨など降るもつきづきし。(枕草子)

趣がある
美しい
似つかわしい
好ましい

解説:

「夏は夜が良い」という文脈で、月夜や闇夜の蛍だけでなく、雨が降るのもまた「(夏の夜に)似つかわしい」と述べています。夏の夜という季節・時間と、雨という天候が調和している、という美意識です。

4. ただ人も、舎人など賜はれる、いとつきづきし。(枕草子)

似つかわしい
好ましい
うらやましい
立派だ

解説:

「普通の身分の人でも、舎人(=従者)をいただいているのは、たいそう(その身分に)似つかわしい」という意味。身分とそれに伴う待遇が調和している様子を肯定的に捉えています。

5. 狩りは、…つきづきしきものなり。(徒然草)

楽しい
似つかわしい
好ましい
美しい

解説:

「狩りは(その季節や貴族の娯楽として)似つかわしいものである」という意味。特定の季節や身分と、狩りという行為が調和していることを示しています。

古文単語「つきづきし」クイズゲーム(選択問題編)

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