「月も『かたへ』、人も『かたへ』。一人では成り立たぬ、それが人の世」
📖 意味と用法
かたへ は、「片方」を意味する名詞で、文脈によって様々な対象を指します。
- 片方、半分、一部分: 対になっているものの一方や、全体の中の一部分を指します。
- 仲間、同輩、同僚: 同じ集団に属する人々。特に自分と同じくらいの身分の人を指すことが多いです。
- そば、かたわら: 物理的な位置として、すぐ近くを指します。
何(誰)の「かたへ」なのかを文脈から読み取ることが重要です。「かたへの人」とあれば、文脈によって「もう一方の人」とも「仲間」とも訳せます。
「片方」の例
扇のかたへをさし出でて、(源氏物語)
(扇の片方(の端)を差し出して、)
「仲間」の例
かたへの人々、あまた声して、「あな、おそろし」と言ふ。(枕草子)
(仲間の人々が、大勢で声を出して、「ああ、恐ろしい」と言う。)
📝 練習問題
傍線部の「かたへ」の現代語訳として最も適切なものを選んでください。
1. 月のかたへは、雲にかくれにけり。(竹取物語)
半分は
仲間は
そばは
片方は
解説:
月の「半分は」雲に隠れてしまった、という意味です。①の用法です。
2. かたへにうち臥して、涙を流す。(伊勢物語)
片方に
仲間に
そばに
半分に
解説:
(人の)「そばに」横になって、涙を流す、という意味です。③の用法です。
3. かたへの人は、いかが思ひけむ。(源氏物語)
そばの人
もう一方の人
仲間
半分
解説:
二人いるうちの、「もう一方の人」は、どのように思っただろうか、という意味です。①の用法です。
4. かたへの女房、笑ふを聞きて、…(枕草子)
片方の
そばの
同僚の
半分の
解説:
宮仕えの場面で、「同僚の」女房が笑うのを聞いて、という意味です。②の用法です。
5. かたへは落ち入りぬ。(宇治拾遺物語)
仲間は
そばの者は
片方の者は
半分は
解説:
二人組の盗人のうち、「片方の者は」(穴に)落ちてしまった、という意味です。①の用法です。