古文単語解説:たより

たより (名詞)

①頼れるもの・縁故 ②機会・ついで ③手段・方法 ④配置・具合

「頼る」から生まれた言葉。人・物・時…あらゆる「頼り」を指す。

「人の『たより』、文の『たより』、風の『たより』。何かを頼り、機会をうかがうのが人の世の常」

📖 意味と用法

たより は、動詞「頼る」の連用形が名詞化したもので、頼りになるものを幅広く指す多義語です。現代語の「便り(手紙)」は意味の一部にすぎません。

  1. 頼れるもの、よりどころ、縁故、つて: 人や物など、頼みとできるものを指します。
  2. 機会、ついで、きっかけ: 何かをするのに都合のよい機会を指します。
  3. 手段、方法: 目的を達成するための方法を指します。
  4. 配置、具合、風情: 物事の配置や、ものの様子の良し悪しを指すこともあります。

「頼りになるもの」という中核の意味から、文脈に応じて「人・縁故」「機会」「手段」などと訳し分けることが重要です。

「縁故」の例

たよりなき人のためには、…(徒然草)

(頼るべき縁故のない人のためには、…)

「機会」の例

花のたよりなどを、…(源氏物語)

(桜の花の咲いた機会などを利用して、…)

📝 練習問題

傍線部の「たより」の現代語訳として最も適切なものを選んでください。

1. たよりを求めて、文をやる。(伊勢物語)

つて
機会
手段
手紙

解説:

手紙を届けてくれる人や方法、つまり「つて」を探して手紙を送る、という意味です。①の用法です。

2. これをたよりにて、かの国に行かむ。(竹取物語)

縁故
きっかけ
手段
手紙

解説:

これを「きっかけ」として、あの国へ行こう、という意味です。②の用法です。

3. 学問は、ただたよりなく、ひとりある人のする事なり。(徒然草)

機会
手段
頼るもの
手紙

解説:

学問は、他に「頼るもの」がなく、孤独な人がするものだ、という筆者の考えです。①の用法です。

4. 風のたよりに、かの人の声、かすかに聞こゆ。(源氏物語)

縁故
機会
つて
手紙

解説:

風が吹いてくるという「つて」で、あの人の声がかすかに聞こえる、という意味です。「風の便り」という現代語の語源にもなっています。

5. たよりごとに、物を言ひおこせたり。(更級日記)

縁故があるたびに
機会があるたびに
手段があるたびに
手紙があるたびに

解説:

「機会があるたびに」、手紙などをよこした、という意味です。②の用法です。

古文単語「たより」クイズゲーム(選択問題編)

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