古文単語解説:やをら/やはら

やをら/やはら (副詞)

①そっと・静かに ②おもむろに・ゆっくりと

物音を立てず、落ち着いて行動するさま。上品な動作の基本。

「姫君は『やをら』起き上がり、几帳の陰から『やはら』文を取り出す。その静かな動きにこそ、気品は宿る」

📖 意味と用法

やをら(またはやはら)は、動作が静かでゆっくりと行われる様子を表す副詞です。現代語の「やおら(=不意に、急に)」とは意味が全く逆なので注意が必要です。

  1. そっと、静かに: 物音を立てないように、注意深く行動する様子。
  2. おもむろに、ゆっくりと: 落ち着いて、慌てずにゆっくりと行動する様子。

現代語の意味に引きずられず、「静かに、ゆっくりと」という本来の意味をしっかり覚えることが最も重要です。貴族や身分の高い人物の優雅な動作を描写する際によく使われます。

「そっと」の例

やをら戸を開けて、入り給ひぬ。(源氏物語)

(そっと戸を開けて、お入りになった。)

「おもむろに」の例

やはら立ち上がりて、…(平家物語)

(おもむろに立ち上がって、…)

📝 練習問題

傍線部の「やをら/やはら」の現代語訳として最も適切なものを選んでください。

1. やをら懐より笛取り出でて、吹き鳴らし給ふ。(平家物語)

そっと
急に
不意に
おもむろに

解説:

懐から笛を取り出す動作です。優雅な場面であり、「そっと」または「おもむろに」取り出して吹き鳴らしなさる、という意味です。

2. やはらかい抱きて、…(源氏物語)

急に
そっと
不意に
強く

解説:

(若紫を)「そっと」抱き上げて、という意味です。乱暴ではなく、優しく静かな動作を表しています。

3. やをら身を動かし給へば、…(大鏡)

急に
不意に
静かに
突然

解説:

「静かに」お体を動かしになると、という意味です。落ち着いた動作を表しています。

4. やはら御衣をひきやりて、…(堤中納言物語)

そっと
急に
不意に
強く

解説:

お召し物を「そっと」引きのけて、という意味です。物音を立てないように注意深く行動する様子です。

5. やをら起き上がりて、火をともして見れば、(今昔物語集)

急に
おもむろに
不意に
突然

解説:

「おもむろに」起き上がって、火を灯して見ると、という意味です。慌てず、ゆっくりと起き上がる様子を表しています。

古文単語「やをら/やはら」クイズゲーム(選択問題編)

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