『ドリトル先生航海記』 英文/和訳 【4-3-2.悪天候】

※カラフル対訳で紹介している作品はすべてパブリックドメインです。
このサイトで使われている作品のすべては著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開しているProject Gutenberg(プロジェクト・グーテンベルク)LibriVox(リブリヴォックス、朗読図書館)の作品を出典としています。
翻訳者:satoyayo4080

原文
音声

Indeed[実に, 実際に] the whole sky was now beginning to take on a very threatening look.

いかにも、空全体が恐ろしい様子になってきた。

The black line to the eastward[東方へ] grew blacker as it came nearer and nearer. A low, rumbly, whispering[ささやき, ひそひそ話] noise went moaning[(風などの)うなり声] over the sea.

東に向かって伸びている黒い線は近づくにつれ、より黒さを増していった。低く、ゴロゴロといったざわめくような音が海の上にうめき渡って響いていた。

The water which had been so blue and smiling turned to a ruffled[波立たせる] ugly gray.

あれほど青く微笑んでいた水面が、荒れ狂い醜い灰色に変わっていった。

And across the darkening sky, shreds[断片] of cloud swept[掃除する, 掃く] like tattered[ぼろぼろの, ぼろを着た] witches flying from the storm.

そして、暗くなった空の向こうには、嵐から飛んできたぼろぼろの魔女のように、雲の切れ端押し流されていった。

I must confess[白状する] I was frightened. You see I had only so far seen the sea in friendly moods:

正直言って、怖かった。知っての通り、私はこれまでおだやかな[友好的な雰囲気の]海しか見たことがなかったのだ。

sometimes quiet and lazy; sometimes laughing, venturesome and reckless; sometimes brooding[~をじっと考え込む, くよくよ考える] and poetic,

ある時は静かで怠惰な、ある時は笑い、冒険的で無鉄砲な、(月光がさざ波を銀の糸に変え、… ~する)時は静かに漂う詩的な。

when moonbeams turned her ripples into silver threads and dreaming snowy night-clouds piled up fairy-castles in the sky.

月光さざ波を銀のに変え、幻想的な雪をかぶった夜空の雲が、空中の妖精のお城のように積み重なる (時は静かに漂う詩的な海だった)

But as yet I had not known, or even guessed at, the terrible strength of the Sea’s wild anger.

けれども、私はまだ、荒れ狂う海の恐ろしい力を知らなかったし、想像すらしていなかった。

When that storm finally struck us we leaned[傾く] right over[直上] flatly[水平に] on our side, as though some invisible giant had slapped the poor Curlew on the cheek.

その嵐がとうとう襲ってきたのだ。船は真横に大きく傾いた。まるで、見えない巨人がかわいそうなカーリュー号の頬をひっぱたいたかのように。

After that things happened so thick and so fast[次々と、どんどん] that what with the wind that stopped your breath,

それからは、次から次へと、息が止まるほどの風、~などなどいろいろなことが起こりました。

the driving,[〈あらしなど〉猛烈な] blinding water, the deafening noise and the rest, I haven’t a very clear idea of how our shipwreck came about.[起こる]

嵐が吹き荒れ、一寸先も見えなくする大波、耳をつんざくような音などなど、私には船の難破がどのように起こったのか、よくわからないままだった。

I remember seeing the sails, which we were now trying to roll up upon the deck,

私は甲板の上に巻き上げようとしていた帆が  ~のを覚えている。

torn out[引き裂く] of our hands by the wind and go overboard like a penny balloon—very nearly carrying Chee-Chee with them.

風で僕らの手から奪い取られ、小さな風船みたいに吹き飛ばされてしまい、もう少しでチーチーも一緒に飛ばされるところだった(のを覚えている。)

And I have a dim[おぼろげな] recollection of Polynesia screeching somewhere for one of us to go downstairs and close the port-holes.

それから、ポリネシアが「誰か下に降りて丸窓を閉めて」と、どこかで金切り声をあげていたのを微かに覚えている。

In spite of our masts being bare of sail we were now scudding[(強風に追われて)ほとんど帆を揚げずに走る] along to the southward at a great pace.

マストには帆が張られていないにも関わらず、船は南に向かって猛スピードで走っていった。

But every once in a while huge gray-black waves would arise from under the ship’s side like nightmare monsters, swell and climb, then crash down upon us, pressing us into the sea;

そして、時折、悪夢に出てくる怪物のような灰黒色の大波が船腹から起き上がり、うねるように膨れ上がり、僕らの上へと砕け落ちてきて、僕らを海へと押し流した。

and the poor Curlew would come to a standstill,[行き詰まる] half under water, like a gasping,[あえぎ, 息切れ] drowning[おぼれ死にする] pig.

あわれなカーリュー号は、あえいで溺れている豚のように、半分水に沈んで、動かなくなってしまっていた。

While I was clambering[やっとはい登る] along towards the wheel to see the Doctor,

私は、先生に会うために舵輪の方へよじ登っていこうとして、

clinging like a leech[ヒル] with hands and legs to the rails lest[~しないように] I be blown overboard,[(船から)水中に] one of these tremendous seas tore loose[〔物が強く引っ張られて〕外れる] my hold,[握り]

手すりに両手両足で(ヒルのように)しがみつき、船外に吹き飛ばされないようにしていたのだが、ものすごい大波で握っている手が外れてしまった。

filled my throat[のど] with water and swept me like a cork the full length of[全長] the deck.

口の中が海水でいっぱいになり、私は甲板の端から端までコルクのように押し流された。

My head struck a door with an awful bang. And then I fainted.

酷い音を立てて頭をドアにぶつけてしまい、気を失ってしまった。