1.ベンボウ提督亭の年老いた船乗り

宝島

1.ベンボウ提督亭の年老いた船乗り

ぼくの父親がベンボウ提督亭っていう宿屋をやっているある日、日に焼けた刀傷のある年老いた船乗りが初めて私たちの宿に泊まりにやってきた。それがやつ、キャプテンとの初めての出会いだった。

やつの話はなによりも(悪いことには)みんなを怖がらせた。それは恐ろしい話ばかりで、縛り首や、板歩きの刑(目隠しした捕虜を板の上で歩かせ、海に落とす)、あるいは海の嵐や、ドライトルトゥーガス諸島に関すること、カリブ海での狼藉やその風土についての話だった。