2-1. 結婚指輪

イボンヌ・ドリニーは息子にキスをして、良い子でいるんですよと諭した。「ドリニーのおばあ様はあまり子供好きじゃないでしょ。そのおばあ様がお前に会いに来るように頼むなんてね。 (いい子にして)分別のある子だと見せるのよ」

2-2. 結婚指輪

イボンヌはしばらくの間ぐったりとしていた。[不活発な,のろい] 頭のなかではさまざまな考えがぼんやりと、それでいて目まぐるしく駆け巡り[ぐるぐる回る] パっと[迅速に]何かを思いついては炎のように彼女を焦がすのだった。

2-3. 結婚指輪

車[馬車]の音だけが通りの静けさをさえぎる、冬の夕暮れのもの寂しい[荒涼とした, 退屈な]時間が何時間も過ぎた。柱時計が無情に[無慈悲に]鳴った。手足が麻痺して[(悲しみ・疲労などで)麻痺した]夢うつつのなかで[半分眠っている]イボンヌは時計の打つ音を数えた。

2-4. 結婚指輪

ホレス・ベルモントの冷静さ、みごとな[りっぱな]声、親しみのこもった抑揚が徐々に伯爵夫人を落ち着かせた。[静かにした]まだひどく弱ってはいたが、彼女はその男の存在にさわやかな安らぎを覚え、心丈夫[安心]となった。[得た]

2-5. 結婚指輪

「これは結婚指輪ではありませんの。ずっと前のある日、寝室のマントルピース[暖炉の上部の飾り棚]に落としてしまったんです。ほんのさっきまで[1分前に]置いておいたというのに、何度探しても[try as I might 一所懸命やっても]見つかりませんでした。

2-6. 結婚指輪

彼はイボンヌの手首をつかんだ。彼女は逃れようと[自分自身を解放しようと]したためベルモントは彼女の抵抗を制する[打ち勝つ]のに少し力を使【う】わなければならなかった。

2-7. 結婚指輪

「私は主張しているわけではないのです、お母さま」と伯爵は言い、「私は断言しているのです。誓って言います[宣言、意思表示する]が、三ヶ月前の休暇中に、家具職人がこの部屋と夫人の私室に絨毯を敷いていた時、私が妻にあげた結婚指輪が床の割れ目に落ちているのを見つけたのです。

2-8. 結婚指輪

僕たちはモンテカルロのテラスに座っていた。ルパンは話を終えると、タバコに火をつけ、静かに煙を青い空にくゆらせた。