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翻訳者:kie_takazawa
『若草物語』英文/和訳【21-4.ローリーのイタズラとジョーの和解】
“Come on, then! Why not? You go and surprise your father, and I’ll stir up old Brooke.
「さあ、行こうよ!いいじゃないか!行ってお父さまを驚かせてあげようよ。ブルック先生も驚く[興奮する]ぞ。
It would be a glorious joke. Let’s do it, Jo.
きっと面白いよ[それはすばらしいジョークだろう]。やろうよジョー
We’ll leave a letter saying we are all right, and trot off at once. I’ve got money enough.
僕らは大丈夫っていう手紙を置いて、すぐに出発だ[小走りで離れる]。お金は十分持っているよ。
It will do you good, and no harm, as you go to your father.”
お父さまのとこに行くんだから、君のためにもなるし、悪いことではないよ」
For a moment Jo looked as if she would agree, for wild as the plan was, it just suited her.
一瞬、ジョーは同意するかのような顔をした。突拍子もない計画は彼女にぴったりだったのだ。
She was tired of care and confinement, longed for change, and thoughts of her father blended temptingly with the novel charms of camps and hospitals, liberty and fun.
彼女は閉じこもって介護をすることにうんざりしていて、変化に憧れていたので、父親に会えることや軍の野営地や病院、自由と楽しみといった目新しい魅力が混ざり合って心そそられるのだった。
Her eyes kindled as they turned wistfully toward the window, but they fell on the old house opposite, and she shook her head with sorrowful decision.
物欲しそうに窓の方を向き彼女の目は燃え上がったけれど、向かいの古い家に視線を移し[視線が向かい側の古い家へと降り]、彼女は悲しげに決心をして首を振った。
“If I was a boy, we’d run away together, and have a capital time, but as I’m a miserable girl, I must be proper and stop at home.
「もし私が男の子だったら、一緒に逃げ出して楽しい時間を過ごすけど、不幸なことに[哀れな]女の子だから、きちんと家にいなくちゃ。
Don’t tempt me, Teddy, it’s a crazy plan.”
私を誘惑しないで、テディ、そんなのは無茶な計画ってものよ」
“That’s the fun of it,” began Laurie, who had got a willful fit on him and was possessed to break out of bounds in some way.
「だから楽しいんじゃないか」とローリーは言い始めた。ローリーは強情[強情な一時的興奮,発作]になっていて、何とかして束縛から逃げたいと夢中だった。
“Hold your tongue!” cried Jo, covering her ears. “‘Prunes and prisms’ are my doom, and I may as well make up my mind to it.
「黙ってよ!」と、ジョーは耳をふさいで叫んだ。「『おしとやか[堅苦しい話し方、外見、態度を示すために使われるフレーズ]』でいるのが私の運命なんだから、そうするって心を決め【る】なきゃいけないのよ。
I came here to moralize, not to hear things that make me skip to think of.“
私がここに来たのは説教をするためで、心躍るような(~のことを考える,~のことを想像する)]話を聞くためじゃないのよ」
“I know Meg would wet-blanket such a proposal, but I thought you had more spirit,” began Laurie insinuatingly.
「メグならこんな提案を聞いても相手にしない[白ける]だろうけど、君ならもっと根性があると思っていたんだがなあ」とローリーは遠回しに[ほのめかすように]言い始めた。
“Bad boy, be quiet! Sit down and think of your own sins, don’t go making me add to mine.
「悪い子だわ、黙って!じっと座って自分の罪を考えなさいよ、私にまで罪を犯させないでよ。[私に追加させるようなことはしないで]
If I get your grandpa to apologize for the shaking, will you give up running away?” asked Jo seriously.
私がおじい様に叩いたことを謝【る】らせてあげたら、逃げるのはやめる?」とジョーは真剣に尋ねた。
“Yes, but you won’t do it,” answered Laurie, who wished to make up, but felt that his outraged dignity must be appeased first.
「そうだね、でもそんなことできっこないよ」とローリーは答えた。彼も仲直りはしたかったのだが、踏みにじられた[蹂躙された]面目をまずなだめてもらいたいと考えていた。
“If I can manage the young one, I can the old one,” muttered Jo, as she walked away, leaving Laurie bent over a railroad map with his head propped up on both hands.
「若い方がなんとかできるんだから、年取った方だってなんとかなるわ」とジョーは呟き、ローリーを残してその場を立ち去った。ローリーは頬杖をついて[両手で頭を支えて]、身を屈めて路線図を覗き込んでいた。
“Come in!” and Mr. Laurence’s gruff voice sounded gruffer than ever, as Jo tapped at his door.
ジョーがドアをノックすると、「お入り!」とローレンス氏のぶっきらぼうな声が、かつてないほど荒々しく聞こえた。
“It’s only me, Sir, come to return a book,” she said blandly, as she entered.
「私です。本を返しに伺いました」と穏やかに言いながら入ってきた。
“Want any more?” asked the old gentleman, looking grim and vexed, but trying not to show it.
「もっと読みたいかね?」と老紳士は、険しく[いかめしい, 厳格な]苛立った様子だったがが、それを表に出さないようにして尋ねた。
“Yes, please. I like old Sam so well, I think I’ll try the second volume,” returned Jo,
「はい、お願いします。『サムおじさん』がとても好きなので、2巻目を読んでみようと思います」とジョーは答え、
hoping to propitiate him by accepting a second dose of Boswell’s Johnson, as he had recommended that lively work.
面白い[生き生きとした]本[作品]だからと勧めてくれたボズウェルの『サミュエル・ジョンソン伝』の2冊目[2回目]を借りて[受け入れて]、彼の機嫌を取【る】れないかと望んでいた。
The shaggy eyebrows unbent a little as he rolled the steps toward the shelf where the Johnsonian literature was placed.
ローレンス氏がジョンソン文学作品が置かれている棚の方へ脚立を転がして行くうちに、そのもじゃもじゃした眉が少し伸びてきた。[まっすぐにする]
Jo skipped up, and sitting on the top step, affected to be searching for her book, but was really wondering how best to introduce the dangerous object of her visit.
ジョーは飛び上がって脚立の上に腰かけ、本を探しているようなふりをしたが、この危険な訪問の目的についてどうやって言い出したものか[どのように紹介するか]と考えていた。
Mr. Laurence seemed to suspect that something was brewing in her mind,
ローレンス氏はジョーが何か企んでいるのではと疑っているようだった。
for after taking several brisk turns about the room, he faced round on her, speaking so abruptly that Rasselas tumbled face downward on the floor.
部屋の中で何度か行ったり来たり[活発なターン]した後、ローレンス氏はジョーの方を向いて、出し抜けに話しかけてきた。(ジョーの手にあった)『ラッセラス』は床に真っ逆さまに[うつむけに]すべり落ちてしまった。
“What has that boy been about? Don’t try to shield him. I know he has been in mischief by the way he acted when he came home.
「あの子は何をしたんだね?彼をかばおうとしないでおくれ。家に帰ってきたときの振る舞い方であの子がいたずらをしていたことは分かっているのだよ。
I can’t get a word from him, and when I threatened to shake the truth out of him he bolted upstairs and locked himself into his room.”
あの子からは何も聞くことができず、真実を聞き出そうと[振って出す]脅すと、二階に逃げ出し部屋に鍵をかけてしまったんじゃ」
“He did wrong, but we forgave him, and all promised not to say a word to anyone,” began Jo reluctantly.
「彼は悪いことをしたけど、私たちは彼を許し、誰にも一言も言わないと約束したんです」と、ジョーはしぶしぶ言い始めた。
“That won’t do. He shall not shelter himself behind a promise from you softhearted girls.
「それはいかん。あなた達のような心の優しいお嬢さん方との約束を自分の盾[避難場所]にするのなどもっての外だ。
If he’s done anything amiss, he shall confess, beg pardon, and be punished. Out with it, Jo. I won’t be kept in the dark.“
もし彼が何か悪いことをしたんなら、告白して許しを請い、罰せられ【る】ねばならん。言ってくだされ、ジョー。わしは秘密にされる[蚊帳の外に置かれる]ことは好かんのでな」
Mr. Laurence looked so alarming and spoke so sharply that Jo would have gladly run away, if she could, but she was perched aloft on the steps,
ローレンス氏の様子は容易ならぬもので、口調も厳しいものだったので、ジョーはできることなら喜んで逃げ出したかったが、彼女は脚立の上に座っていた[止まっていた]し、
and he stood at the foot, a lion in the path, so she had to stay and brave it out.
ローレンス氏は行く手を阻むライオンのように足元に立っていたので、彼女はそこにとどまって立ち向かう[ひるまずに立ち向かう, 最後まで屈しない]しかなかった。
“Indeed, Sir, I cannot tell. Mother forbade it. Laurie has confessed, asked pardon, and been punished quite enough.
「本当に、言えないのです。母に禁じられているのです。ローリーは白状し、許しを請い、十分に罰せられたんです。
We don’t keep silence to shield him, but someone else, and it will make more trouble if you interfere. Please don’t.
彼をかばうために黙っているのではなく、別の人を守るために黙っているんです。もしおじい様が手出し[口出しする,乗り出す]をしたらもっと面倒になります。どうかやめてください。
It was partly my fault, but it’s all right now. So let’s forget it, and talk about the Rambler or something pleasant.“
一部私のせいでもあるんです。もう大丈夫です。だからそれを忘れて、『ランブラー』か何か楽しいことについて話しましょう」
“Hang the Rambler! Come down and give me your word that this harum-scarum boy of mine hasn’t done anything ungrateful or impertinent.
「『ランブラー』などどうでもよい!降りて来て、わしの無鉄砲な少年が、恩知らずで失礼なことは何もしていないと言ってくだされ。
If he has, after all your kindness to him, I’ll thrash him with my own hands.”
あなた方にこんなに親切にしてもらっているのに[親切にしてもらった後に]、もし彼が(悪い事を)していたら、わしはこの手であの子を鞭打つつもりです」
The threat sounded awful, but did not alarm Jo,
その脅しは恐ろしい響きだったが、ジョーは驚【く】かなかった。
for she knew the irascible old gentleman would never lift a finger against his grandson, whatever he might say to the contrary.
怒りっぽい[かんしゃく持ちの, 短気な]老紳士がそう言う反面、何を言っても、孫に指一本触れないことを彼女は知っていたからである。
She obediently descended, and made as light of the prank as she could without betraying Meg or forgetting the truth.
彼女は言われた通り[従順に]降りて行き、メグの名前を出したり[裏切る,売り渡す]、事実を捻じ曲げる[事実を忘れる]ことなく、例のいたずらをできるだけ些細なことのように話した。