『ファウスト』のカラフル対訳について
カラフル対訳で紹介している『ファウスト』は、パブリックドメインの作品を出典としています。
このサイトで使われている作品は、著作権の切れた名作などの全文を電子化し、インターネット上で公開している Project Gutenberg(プロジェクト・グーテンベルク)、 および朗読音声を公開している LibriVox(リブリヴォックス/朗読図書館) の作品を出典としています。
原文はProject Gutenberg、音声はLibriVoxで公開されているパブリックドメイン作品を出典としています。
『ファウスト』英文/和訳 Part 19 大聖堂
大聖堂の礼拝の中で、マルガレーテは群衆にまぎれて祈ろうとします。しかし背後から悪霊が語りかけ、母の死、兄ヴァレンティンの血、自分の胎内に宿る命、そして罪の意識を次々と突きつけます。荘厳なオルガンと合唱が響くほど、彼女の心は追い詰められていきます。
CATHEDRAL. Service, Organ, and Anthem.
大聖堂。礼拝、オルガン、聖歌。
MARGARET amongst a number of people.
マルガレーテは多くの人々の中にいる。
EVIL-SPIRIT behind MARGARET.
悪霊がマルガレーテの背後にいる。
How different, Gretchen, was it once with thee, When thou, still full of innocence.
グレートヒェンよ、かつてのおまえは、どれほど違っていたことか。まだ無垢に満ちていたころは。
Here to the altar camest, And from the small and well-conn’d book Didst lisp thy prayer.
おまえはここで祭壇へ来て、小さく読み慣れた本から、たどたどしく祈りを唱えていた。
Half childish sport, Half God in thy young heart!
半分は子どもの遊び、半分は若い心の中の神だった。
Gretchen! What thoughts are thine? What deed of shame Lurks in thy sinful heart?
グレートヒェン。今のおまえの思いは何だ。おまえの罪深い心には、どんな恥の行いが潜んでいるのだ。
Is thy prayer utter’d for thy mother’s soul, Who into long, long torment slept through thee?
おまえの祈りは、母の魂のためか。おまえのせいで、長い長い苦しみの眠りに落ちた母のためか。
Whose blood is on thy threshold?
おまえの家の敷居にある血は、誰の血だ。
And stirs there not already ‘neath thy heart Another quick’ning pulse, that even now Tortures itself and thee With its foreboding presence?
そして、おまえの心臓の下では、すでに別の命づく脈が動いているのではないか。それは今この瞬間にも、不吉な存在として、自分自身とおまえを苦しめているのではないか。
Woe! Woe! Oh could I free me from the thoughts That hither, thither, crowd upon my brain.
ああ、苦しい、苦しい。あちこちから私の頭に押し寄せてくる思いから、自由になれたなら。
Against my will!
私の意志に逆らって、押し寄せてくるのです。
Dies irae, dies illa, Solvet saeclum in favilla.
怒りの日、その日。世界は灰となって解けるだろう。
The organ sounds.
オルガンが鳴る。
Grim horror seizes thee! The trumpet sounds! The graves are shaken!
ぞっとする恐怖がおまえをつかむ。ラッパが鳴る。墓が震える。
And thy heart From ashy rest For torturing flames Anew created, Trembles into life!
そしておまえの心は、灰の休息から、苦しめる炎のために新たに作り出され、震えながら命へ戻る。
Would I were hence! It is as if the organ Choked my breath.
ここから逃げ出せたなら。まるでオルガンが私の息を詰まらせているようです。
As if the choir Melted my inmost heart!
まるで聖歌隊が、私の心の奥底を溶かしてしまうようです。
Judex ergo cum sedebit, Quidquid latet adparebit!
裁き主が座すとき、隠されたものはすべて明らかになる。
Nil inultum remanebit.
罰されずに残るものは何もない。
I feel oppressed! The pillars of the wall Imprison me!
息苦しい。壁の柱が私を閉じ込めています。
The vaulted roof Weighs down upon me! air!
丸天井が私の上に重くのしかかってきます。空気を、空気を。
Wouldst hide thee? sin and shame Remain not hidden!
身を隠そうというのか。罪と恥は隠れたままではいない。
Air! light! Woe’s thee!
空気を、光を。おまえに災いあれ。
Quid sum miser tunc dicturus? Quem patronum rogaturus!
その時、哀れな私は何を言えばよいのか。誰を守護者として求めればよいのか。
Cum vix justus sit securus.
正しい者でさえ、かろうじて安全であるというのに。
The glorified their faces turn Away from thee!
栄光を受けた者たちは、おまえから顔をそむける。
Shudder the pure to reach Their hands to thee!
清らかな者たちは、おまえに手を伸ばすことに身震いする。
Woe!
災いあれ。
Quid sum miser tunc dicturus—
その時、哀れな私は何を言えばよいのか。
Neighbour! your smelling bottle!
お隣さん。気付け薬の小瓶を。
She swoons away.
マルガレーテは気を失う。
